カテゴリー : 写文俳句

第658週 写文俳句11月その4

猫よぎる路地にすすきの影長し

他から強制された不本意な時間(の使い方)は、出血と同じである。本来、自分ものであるべきはずの時間を強権によって奪われた者は、永遠の出血がつづく。国の命令により本人の意思に反していきなり戦場へ引きずり出されることは、いまのこの国にはない。だが、国家権力によってそのようなことが、昭和以前のように可能な体制につくり変えることはできる。

今日し残した仕事への未練が煮つまったような夕陽が見られるのは、まだ幸せである。自由を奪われた者の毎日は、時間という名前の血をしぼり取られているのである。年の暮れの総決算に血をしぼり尽くさぬよう、十一月は予備の決算月である。

まだ十代、二十代、少年兵や学徒兵が戦場に押し出され、年末を迎えたとき、彼らは新しい年に希望をつなげられなかった。せめて十一月、一ヵ月余裕がある間に、戦争よ、終われとひたすら祈ったという。意思に反する時間を強制された者にとって、十二月は師走ではなく、死走なのである。死走前に戦争よ、終われとひたすら祈った少年兵や学徒兵は、閉塞した時代の中で自分の時間を持てなかった。

十二月は自分の時間を大切にせよと、吹き始めた木枯しに乗って呼びかける。