第5週

母と子の一瞬を乗せ風光る

岐阜県古川町にて

ただ独り死にたる母に蝉時雨


耐えるのも独りの夜の蝉時雨


詩を恋し君忘れたり梅雨走る

(吉野中千本にて)


梅雨の音長しとおもふ深さかな


せせらぎの奥さかのぼる河鹿笛

過ぎこし方の想ひ出追うて


渡らずに聞く人もあり河鹿沢


逃げたとて運命(さだめ)の庭の蝉時雨


雨簾明るき奥に糸を抜く

雨の底薫る花あり明日を待ち