第131週

行きずりのおもかげ薫る金木犀


家史遠く無住の錆(さび)や秋の音


迷い蝶コスモスと化し色時雨

明日は見ずコスモスの色迷い蝶


鱗雲未練を空に貼りつけり


湯煙りや肌かぐわしき夕まぐれ

一夜限りの旅枕かな


金木犀敷き詰めたるや誰(たぞ)の家史


連れ下る女(ひと)なき秋の長い坂


星時雨君住む町に迷い入り


言の葉に涙誘われ午後のカフェ

行方も告げず二筋の道


言の葉も尽きたるいまは鱗雲

動かぬままに君は去りけり