第9週

駅までの濡れたる梅雨に偲ぶ母


旅半ば訃報に戻る梅雨模様


母と子の共に入る梅雨街烟る


素通りの駅に紫陽花濡れており


おもかげを確かめぬまま通り雨

傘の内おもかげ烟る梅雨の街


酌み交わす古酒より分ける迷い花

(バレンタイン1827)


踏切に待つ人ありて梅雨走る


梅雨含むなんの花香る街うるむ


君といる夕陽の中に山遠し


母の背をまどろみ照らす木漏れ日か

子守歌までとぎれがちなる


花の名を問ふひとありて梅雨に入る


頬濡れておもかげ偲ぶ霧転(まろ)び


古賀幸子作(蓼科高原)


朧月屋根より低き位を占めて