第592週 写文俳句8月その3

雲立つや疎遠となりし友若く

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現代は政治、産業、文化等の革命を積み重ねて、いまや便利の革命時代に入っている。便利の頂上に坐った者は、車や電気、ガスどころか、携帯やPCのない時代にすら決して戻れない。さらに巨大な情報の革命によって、人間は便利を限りもなく追求する〃便奴〃となっている。そして、今日の夏休みは便奴のための夏休みと化している。便休である。管理の綱から解放された夏休みが、限られた時間内にできるだけの自由を追求しようとする便休となっている。

そして、八月はその便休の季節なのである。祖霊の里帰りのお盆は、便休の片隅に押し込められてしまった。便利さを追求したあげく、貴重な休暇のうち、目的地までの往復のために何十時間も費やして、正味が痩せ細ったのが便休の実態である。

遠い夏の日、私が全国無銭旅行に費やした時間で、今日は世界一、二周ができる。なにかを、あるいは自分を探して遠方に旅立っても、しょせん便奴から逃れられないのが今日の人生の休暇の実態である。だが、そんな休暇が待ち遠しいのは、他の季節にはない夏雲の彼方に寄せる郷愁があるからであろう。

初出:2010年8月梅家族(梅研究会)