第599週 写文俳句10月その1

幻影を街に映してうろこ雲

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日本列島を連打した台風もそろそろ下火になり、秋晴れの日がつづくようになる。春の黄昏のグラデーションに比べて、秋の夕暮れは早い。太陽の位置にまだ余裕があるなと油断していると、たちまち街角に夕闇が墨のように降り積もる。

街角で顔馴染みのご近所衆に出会っても、行きずりの人のようにすれちがってしまう。まだかすかに昏れ残っている空のほうに目を上げると、鱗雲が張りついたように動かない。人恋しくなるような黄昏とは、こんなときをいうのであろう。

初出:2009年10月梅家族(梅研究会