第605週 写文俳句11月その3

木枯しと向かい立ちたり窓の際

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十一月を人生にたとえるなら、定年二年前、大学生活なら三年生、ゴールデンウイークが終わる二日前、スーパーが値段設定によく用いるパー使いと呼ぶ、九百九十八円や九十八円、つまり一円安では見透かされるので二円まけるという手、千秋楽二日前等々、そんな感じである。

一年の窓際が十一月であり、月末には気の早い忘年会を開く人もいる。十二月に入ってからでは会場が取れなかったり、忙しくて人が集まらないことを考慮してである。その意味では年末よりも気忙しい。

人生の窓際は、リタイア後の余生に備える。家族の扶養義務や、仕事の責任や使命から解放されて、自由の身になれる。余った生にするか、自分自身に忠実に生きる誉れある誉生にするか、本人次第である。

十一月の末に眺める窓際からの展望には、”余”と”誉”が入り交った複雑な風景が開いている。外は木枯しでも自由の風が吹いている。

初出:2009年10月梅家族(梅研究会)