第664週 写文俳句1月その1

ほっとする不眠の夜のご来光

毎年、年が替わる都度、自分が変わるような気がする。そして年末にたどり着き、ほとんどなにも変わっていないことに気がつく。変わったとすれば、むしろ悪いほうに変わっており、変わらなかった年は平穏無事な年だったのである。

劇的な変化というものは宝くじに当たるような幸運や、よほど不幸な出来事や、事件や、災害に巻き込まれなければ発生しない。家族や親しい人たちと死別するのは、死因が不幸な出来事でない限り、人生において避けることができない順番である。子が親よりも早く死ぬのは最大の親不孝であるといわれるが、これは人生の順番を替えたからである。

「紅白」を見て除夜の鐘を聞き、初詣の後、初日の出を眺めるという順番も、人間が文化をもち合わせてからなんとなく定まっているが、文化がない時代は、盆や正月の年中行事もなく、初日の出は毎日繰り返される天然現象にすぎない。初日の出を見るために危険を冒して山に登ったり、寒風に吹かれて海岸に立つのも、文化が人生に刻み目をつけたからである。

初出:2010年1月梅家族(梅研究会)