第666週 写文俳句1月その3

消えた家木枯し止まるところなし

あるSF作品に、宇宙飛行士が恋人に別れを告げて宇宙に旅立つ。地球時間と宇宙時間の経過は異なり、パイロットの恋人が地球に帰って来る遥かな未来まで彼女は生きられない。そこで恋人に会うために、彼女自身も宇宙パイロットとなって宇宙船に乗って追いかける。同じ宇宙に飛び立てば、宇宙時間の経過が同じになると考えたのである。

ところが、地球に帰って来ると、宇宙では微妙なズレであった時間が、地球時間では数百年に相当し、家族や親しい人々はすべて死去しており、地球に帰って来ているはずの恋人にも会えない。恋人は彼女が宇宙船に乗って彼を追いかけたことを知り、地球に待っていても会えないので、ふたたび宇宙船に乗って宇宙へ飛び出す。こうして二人は宇宙で際限もなくすれちがいを繰り返すというストーリーである。

初出:2010年1月梅家族(梅研究会)