第670週 写文俳句2月その3

雪化粧見馴れし街を見失い

梅の香りを嗅ぐ都度、私は郷里の町のある場所をおもいだす。

私が通っていた高校は男子校であり、バンカラな校風であった。女子高校は私の学校と正反対の方角にあり、登下校時、市内の交差点で両校の生徒が一瞬すれちがう。交差点の角にある家の庭に三、四本の梅の木があり、二月には百花にさきが魁けて白い花弁をつける。

私には意中の女子高生がいて、登下校時、その女子高生とすれちがうのが楽しみであった。

おおむね登校時は同じ時間帯であり、たいていすれちがう。彼女の時間を統計的に計った私は、最も可能性の高い時間帯を狙って交差点を渡る。いったん渡った以上、彼女とすれちがえなくとも引き返せない。そんなことをすれば連れ立って登校する校友たちから不審がられてしまう。

彼女に会えた朝は一日中心が弾み、会えなかった日は落ち込む。…次週へつづく

初出:2010年2月梅家族(梅研究会)