第681週 写文俳句5月その1

人生の岐路いく度(たび)や鯉幟

春がようやく蘭(た)けると、五月である。春愁を踏まえて五月病に悩む者もいるが、年間を通して五月は最も溌剌としており、芳しい季節である。

一年のうち、どの月が最も好きかというアンケートを取れば、五月が圧倒的に人気がある。それはゴールデンウィークの応援もあるであろうが、この月本来の溌剌たる芳しさが人気を集めていることは否めない。五月病は春愁以上に、季節自体の生命力についていけない位負けから発する。

大晦日、「紅白」を一人で見る寂しさに耐えられず、友人の家に集まってみたり、友人のいない者は盛り場に出てカウントダウンに加わったりして、さらに深い孤独を味わう。群衆の中の孤独を季節の中に移したようなものである。

だが、祭りに参加していると、他人の体熱を冷えた心身にうつされるように、五月という季節のお祭りに参加していると、いつの間にかその陽気に心身が浮かれたっている自分に気がつく。

初出:2010年5月梅家族(梅研究会)