第96週

虎落笛(もがりぶえ)窓無き家を吹き抜けし

木枯しを阻む窓なし人去りて


吹き溜る落葉もなくて家史終る


幾星霜家史踏み砕きブルの冬

初壊し家なき後のブルの爪(つめ)


荒ら家に吹き抜け行くや初松籟(しょうらい)


階段を上りて帰る部屋もなく

庭樹残して家消えにけり


鉄(ブル)の爪咥(くわ)え取りたり吹きだまり


廃屋を壊して虚し風の色


憲法も及ばぬ破壊天暗し


ゼネコンに怯えたる街風寒し


秋天を十字に切りて入信す