第32週

車窓まで渓声聞こゆ逝く夏を

追う旅なれば行く当てもなし


すれちがう一瞬の恋星月夜(螢狩り)


人生を煮つめ落ちたり枝一葉


朝寒や待つ身に長し主(あるじ)の茶


温もりを求めず街に集いおり


青春も駄弁(だべん)の中に長い午後


能天気くわえ煙草でバスを抜く

都大路に恐い者なし


路地通う猫の恋あり我独り


日の丸もうなだれており敬老日