第61週

帰り行く独りの宿や夏木立


高原に夏雲湧くや過去もなし

若き日と同じ雲立つ友いずこ


先立ちし人を送りて青簾(すだれ)


紫陽花に雨の声あり珈琲(カフェ)香る


信号に添(たぐ)うて替る霧の息


過ぎし日を水に溶かせり瀧の色


主住まば潜みて漏るる霧の声