第105週 吉野特集1

我もなお途上にありて花嵐


花の奥分け入るほどに花まみれ

花襖隙なく閉じて出口なし

花襖心欠く隙満たしけり


人生の岐路埋めたり花標(しるべ)


霞(かすみ)立つ山影までも花映えり


花遍路人の脂を残しつつ


山道をしばし動けず花の門


花戦(いくさ)桜吹雪を交えたり


花社(やしろ)信者迷いて散り行けり


夜桜を追いたるあたり月沈む


花あれば一期の出会い吉野山


寒戻り花犇きて枝に侍(じ)す

先に散りたる花弁帰らず


散り行けば花それぞれの行方あり

先行く人を追わざらましを


花の海満ち来るまでを酌み交わす

ひとひらの花誰(た)ぞの杯


迷い花光り砕きて散り行けば

我かえりみず佳人去りしも


風薫る花びらを浴び行きずりの

旅ぞ悲しきいざ帰りなむ