第98週

富士の位置忘れていたり雪化粧


その容姿雪を冠して街標(しるべ)


実らざる恋幾夜あり霧襖


塔頂は疑惑に霞む伏魔殿


寒星夜億光年の便りあり


恋を解く心も早瀬年の暮


寒月や欠けたるままに我独り

燃え尽きるまで産み尽くせ女王蜂


誰(た)ぞ住むや奈落の底の冷えごもり