第600週 写文俳句10月その2

赤々と陽は立ち姿昏れゆけり

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学生時代、盛んに山に登った。百名山中、三十数座狙わずして登ったのであるから、一応の山歴といってよいであろう。

当時の私は、将来、どの方向に進むべきか見当もつかず、ただ当てもなく自分探しの旅をしていた。自分探しとは武者修行のようで恰好よさそうであるが、実は世の中に甘ったれてふらふらしているにすぎない。当てもなく旅をすることによって、不安定な自分をごまかしているのである。

だが、そんな旅が通りすぎてから振り返ると、無性に懐かしい。目的もなく、予定に縛られず、その日の気分次第で旅をつづける。もちろん旅費は十分ではない。まさに風の吹くまま、気の向くままの旅であり、終バスに乗り遅れて民家に泊めてもらったり、野宿をしたりした。

初出:2009年10月梅家族(梅研究会)