四月、待ちに待った春にいま取り巻かれている。桜を中心にして、桃、木蓮、杏、海棠、辛夷、椿、花水木などが相次いで、あるいは一斉に咲き揃う。モノクロであった冬に比べて、なんと多彩な季節であろう。
希望に燃えた新入生が校門を潜る、新入社員が仕立ておろしの背広やスーツに身を固めて颯爽と出社して来る。前途は洋々として見える。
一年で最も人気の高いのが四月である。春は四月に代表される。
桜吹雪の道を歩く人々も、どんな人生を抱えていても、いま彼らの背中を押すものは、無数の花弁を乗せた春の風である。
初出:2008年4月梅家族(梅研究会)