第544週~写文俳句

写真と俳句を組み合わせたものが「写真俳句」であるが、私はこれに文章(エッセイ)を加えて「写文俳句」としている。第543週から私が発表してきた「写文俳句」を何週かに分けて掲載します。


 

梅の香を煮つめる空や星を溶き

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庭に梅が咲き始めると、早春の気配が揺れて、気品ある香りが漂う。まだ冬将軍は威勢を張っているが、日毎に春色が濃くなる。

梅の香が煮詰まってくると、春は門前に忍び寄っている。そんなとき、いつの間にか昏(く)れまさっていく夕空を、星の光を溶いたような春光が彩り、長い冬に耐えた喜びが心の水位を上げてくるのである。

初出:2007年2月ほんとうの時代(PHP研究所)