第545週~写文俳句

写真と俳句を組み合わせたものが「写真俳句」であるが、私はこれに文章(エッセイ)を加えて「写文俳句」としている。第543週から私が発表してきた「写文俳句」を何週かに分けて掲載します。

 

隣犬と香り分けたり朝のカフェ

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喫茶店(カフェ)の朝には人生が弾んでいる。出勤前の一時、喫茶店に立ち寄る人も、夜勤帰りの人も、リタイヤした人も、朝靄(あさもや)を身体にまとうようにして入ってくる。日が高くなってくると、風景が平板になってつまらなくなる。朝が断然面白い。

行きつけのカフェの”指定席”に腰を下ろして苦味系のコーヒーを喫(の)みながら、自由業の特権で立ち寄る常連の顔をぼんやり眺めていた。

ふと、テラスを見ると常連の飼い主の足元に犬がコーヒーの香りを主と分け合うようにしてうずくまっていた。

朝靄をまといて坐るカフェの客

 

初出:2007年3月ほんとうの時代(PHP研究所)