第566週~写文俳句

アルバムと語り夜長を独りいて

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本誌に連載を始めて二年、最終回を迎えた。光陰矢の如く、これが最終回となれば、改めて感無量である。

この間の拙なる句と文と写真を振り返ると各号毎に人生の節々が定着されていて感慨を新たにする。

写真や文章は、時間を半永久的に保存してくれるが、人間は常にいまを生き、瞬間の連続を過去にしていく。過去は消費された時間である。

生きている者は、一分一秒たりとも、過去に遡れない。その意味では、年令にかかわりなくだれでも「いまが一番若い」のである。

写真も文も俳句も、その他すべての記録は、一番若かったときの定着であり、保存である。

年末は、回想的(センチメンタル)になりやすい。

押しつまるに連れて、新たな年の展望よりは、今年はたしてなにをしたかと振り返る。一年間の過去が風化するには時間が不足している。

そんなときアルバムを取り出して過ぎ来し方を振り返る。冬の夜長、沁々(しみじみ)と過去と語り合うには、独りがよい。

止むを得ず、いつも独りの人には、年末は辛い時期である。紅白は見ずに、格闘技が適している。それもいまがいちばん若いからである。

初出:2009年12月ほんとうの時代(PHP研究所)