第604週 写文俳句11月その2

夕焼けて街にそびえる蟻の窓

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十一月という月は冬に向かって季節の階段が急降下する。十一月はまだ今年の意識であるが、十二月に入ると師走となり、気持は来年を向いてしまう。そのような意味で、十一月は意識的にはこの年最後の年である。

十一月は一年十二ヵ月のうちで最も影が薄いような気がする。まだそれほど寒くなく、自然は色づき、美しく、過ごしやすい月であるのに、心理的に侘しさがつきまとう。年末の人生のため息や、新しい年に寄せる希望や、三月から五月にかけての若い季節の溌剌たる息吹や、初夏から夏にわたるダイナミズムや、夏から秋に濃くなる内省や回想もない。もう十一月、今年もあと一ヵ月しか残されていないのだと、慌しい気分に追い込まれる。だからといって、師走の忙しさともちがう。

年内、消化しきれそうもないスケジュールを抱えたまま、日毎縮まる日脚を恨むような気分になっている。あまり気乗りしないことは、すべて十二月にまわして、なんとなく時間に追われ、また時間を追っている。いずれにしても、全力疾走をしていない。

初出:2009年10月梅家族(梅研究会)