月光に毒があるように感ずるのは、あるいは汚染された地球と、そこに住む人間の反映であるかもしれない。月夜に性犯罪が多く発生するということも、月光の毒ではなく、機械文明に毒された人間の心が月に反映しているのかともおもう。大気が澄み、月光が最も本領を発揮する季節に、毒があるといわれては、月も面白くないであろう。
だが、月は清らかに明るいと決めつけてしまうのも単純にすぎる。可惜夜の美しさには、常に人間が関わっている。人間が関わらない月は単なる天体にすぎない。毒があっても、人間が関わっている月のほうが断然面白く、風趣に富んでいる。
初出:2009年9月梅家族(梅研究会)