第647週 写文俳句9月その2

可惜夜や灯一つ消し忘れ

かぐや姫の伝説をおもいだすまでもなく、月夜には狼に変身したり、吸血鬼が跳梁したり、ゾンビがよみがえったりする。悪霊や妖怪も月光を好むようである。

俳人は名月を追って、よもすがら池をめぐったり、子供に月を取ってくれとせがまれて困ったりするが、ライフサイクルの速い今日では、しみじみと月を見る夜が少なくなっている。見たくとも、都会の夜はライトアップや高層ビルの陰に隠されて月が見えない。

初出:2009年9月梅家族(梅研究会)