第669週 写文俳句2月その2

梅が香を包みて止まず雪時雨

二月という月は、年始の一月と万物生成の三月にサンドイッチされた、いわば超大国に挟まれた小国のような厳しさをおぼえる。ビッグな年中行事も、ミニイベントも少なく、年末年始で吐き出してしまった人々の懐中も心細い。

二月の命運を担って孤軍奮闘するのは梅である。沈丁花はまだ気配もなく、寒中凛然として花を咲かせる梅は清楚であり、気品がある。桜は艶麗にすぎて、いささか節操に足りないように見えるが、梅は清楚な処女のようである。梅の香りに誘われておそるおそるといった形で引き出された沈丁花の芳香は、初めてキスを知った初恋の乙女のようである。

人生にたとえれば、梅は青春の原形であり、二月にその原形が形成される。

梅研究会理事長松本紘斉氏は本誌特集「梅花のはなし」において、

――人は梅なり
寒風に堪えてこそ
他にさきが魁けて
花ひらくなり――

と的確に凝縮して描写されているが、まさに梅の莟こそ、青春の原形であり、人生の可能性を凝縮しているように見える。

初出:2010年2月梅家族(梅研究会)