第712週

人生を運ぶ車や聖夜まで

この一年間、よいことや悪いことがあっても、とにかく大晦日をもって区切り、新たな年を迎える。今年のままのライフスタイルやパターンを来年に自動的に繰り込んでは、新たな予定も立たず、新しい年に対する期待や覚悟が定まらない。よくも悪くも一年ごとに人生をリセットして、新たな心がけで次の年に臨む。十二月は人生の決算月といってもよい。

年の瀬が迫るにつれて、人間のため息が濃くなるようである。特に、大都会にこの傾向が強い。いまはだいぶ様変わりしているが、昔、特に機械文明があまり幅を利かしていなかったころは、とにもかくにも大晦日を逃げ切れば、債鬼も猶予をしてくれるという風習があった。借金に首がまわらない人は、大晦日、自宅に帰らず(帰れず)、除夜の鐘が鳴り終わるまで逃げまわる。

一方では、一年間、よく働き、新年を迎える準備が整って、年末年始の休暇、ゆっくりと骨休めをする人もいる。

人生さまざまの万華鏡が年の瀬のカウントダウンと共に、どんな一年を送った人々も、来年は来年の風が吹くと能天気に集まって、ハッピー・ニュー・イヤーと寿ぐ。そんなことで人生がリセットされれば安気(あんき)なものであるが、それだけに年末に織りなされる人生模様は面白い。面白いとおもえる者は、それだけこの一年の決算に余裕がある者である。