第8週

終電車去りたる後の梅雨模様


人影の絶えたる駅に傘が待ち


憲法も遠くなりたる建国日

建國の日と切り離す街の旗


もつれたる霧の奥より積み桜

移り香を花ある下に抱きしめり


湯豆腐や一人の夜の味が沁み


湯豆腐や別ればかりを想いだし


集う毎欠ける友あり梅雨走る

(蓼科高原)


少しずつ遅れて泳ぐ鯉上り


駐輪の列にまぶしき風走る


蕎麦食えば昏れまさる町独り旅

友の訃を聞きたる夜に蕎麦すする


廃屋に昔探すや肝だめし


道草に廃屋ありて肝だめし


人生のきざはし長し梅雨もまた


猫通う路地に不在の友訪ね