第555週~写文俳句

新しき年きっぱりと雲もなし

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一点の雲もなく晴れ上がった元旦の空は、年の始めにふさわしい。御来迎を拝み、初詣をしてふと空を仰ぐと、飛行機雲が青空を定規で引いたように二分している。飛行機雲は正確には雲ではない。英語では水蒸気の帯(ベイパートレイル)という。

元日は、年刻みに人生をリセットしてくれる。去年、あまりよいことがなかった人も、今年は平等にリセットされて目盛り(カウンター)ゼロからスタートする。

人生を正月毎に一年刻みにリセットするという知恵は、人生を憂き世と呼ぶように辛いことが多いから発したのであろう。

貧富、地位、運不運、幸不幸、健康病弱など関わりなく、一年毎のリセットによって長い人生マラソンに耐えられる。新しい年と共に始まる真っ白な手帳や日記帳は、あらゆる可能性を含む一年という時間のプレゼントである。

きっぱりとしてなにもない元旦の青い空。

それはなにを書き込もうと自由な人生の画布(カンバス)である。

初出:2008年1月ほんとうの時代(PHP研究所)