第585週 写文俳句7月その1

雲の峰その日無念の色遠し

DH000111

夏は行事が多い。夏を通して最大の行事は祭りとお盆であろう。祭りには郷愁があり、お盆には故人への想いが募る。そして、夏になる都度、これまで通り過ぎてきた人生のそれぞれ夏を想起する。その意味で夏は未来よりも過去を振り返るような気がする。そして、その過去はいつも遠い。昨年の夏の想い出が大昔のように感じられる。個人差はあるが、加齢と共にその傾向が強くなるようである。

日本列島は四季のメリハリが利いている。これが極地や熱帯のように年間を通して冬、あるいは夏のような気候であったら、四季折々の人間の感情やライフスタイルものっぺりしたものになってしまうであろう。『歳時記』に記された四季折々の森羅万象、人事百般も、視野の限り同じ風景がつづく砂漠のように統一されてしまうかもしれない。日本列島は四方海に囲まれ、東西南北にわたって長く伸び、太陽が及ぼす恩恵を最も多様に受ける位置を占めている。日本の文化は四季の織りなす文化といってもよいほどに、その国土の占める位置と関わりが深い。(次週に続く)

初出:2011年7月梅家族代(梅研究会)